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第二章 事件
そんな、つまらない毎日を支えてくれてるのは漫画だった。私は漫画を描くのも読むのも好き。
自分の作ったキャラクターに命を吹き込んでいくのが楽しかった。
自慢じゃないけど、絵は上手い方だし。将来は絶対漫画家って思ってた。でも...自分には無理だと知った。私は、一度、漫画家コンテストに応募したことがあった。
「われながら、上手い!」って自信満々で、
友達のあやっちも、「え?これ亜香里が描いたの?信じらんない!」って言ってくれた。もう、優勝間違いなかった...なのに.....
特別賞にも、優秀賞にも、ならなかった。
初めて、現実と向き合った瞬間だった。
もう、その日から努力するのをやめたんだ。どうせ無駄だし、勉強できるからってモテないし。
意味ないって気づいた。
「今日、青木さん休みだね」考え事をしている私をあやっちが現実に引き戻す。
「風邪でも引いたんじゃない。バカでも風邪引くんだね!」私は怒ったように言った。
私は青木が嫌いだった。青木は漫画家コンテストで優勝した子だ。それだけじゃない。漫画家コンテストの二週間前の美術の時間、私の絵を見て、「へー、支倉(ハセクラ)さんって上手いね、絵!尊敬する!」って言ったのだ。自分の方が上手いくせに。偉そうで嘘つきな性格が私は嫌いだった。
ガラッ!
先生が教室に入ってきた。
「じゃっ!」あやっちは急いで教室を出ていった。
「大事な話があります。静かにしてください」先生がいつもより真剣な顔で言った。みんながヒソヒソと話をする。「なになに?」「何の事?」「もしかして...あの事?」
あの事?何の事だろう?全然理解ができない。
先生は深呼吸してから、
「青木 みどりさんが行方不明になりました」と言った。
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