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「ええ。ワイズマン財団の傘下には、学校法人聖陵学園も入っています。あなたが通っている聖陵学園付属中学は、そのグループ校なのですからね」
そこまで聴いて、薫はふと昨日のことを思い出した。
慌てて教室へ向かう途中で見かけた、金髪の少女。まるで重要人物のような物々しい扱いを受けていたのも当然で、彼女こそ学園の最高権力者であったのだ。
「それじゃあ、シャルロットさんは……」
「そう。私は、あなたの学園の理事長でもあるのです。校長のシュトラウスも私の部下です。本当は、我が家に仕える執事なのですけどね」
「えっ……ええーっ?校長が!?」
「学園の運営は、彼に一任しているのですよ。いくら理事長といっても、たくさんある系列校の面倒をひとりで見ることはできませんからね」
そう言って紅茶を美味しそうに啜ると、シャルロットが表情を改めて言った。
「薫さん、私、あなたにお願いがあるのですが」
「な、何でしょう?」
薫が、思わずどきっとする。
「また、この屋敷に来てくださらないかしら?」
「え……?」薫が思わず聞き返す。「でも、もう品物はお渡ししましたけど……」
「お使いじゃありません。友だちとして来てほしいのです。――できたら、毎日ね」
「と……、友だち、ですか?」
「そうです。お嫌ですか?」
「と、とんでもない」
思わぬ申し出に、薫が上ずった声で答えた。
「そう言っていただいて、私、とても嬉しいです。でも、私みたいなのが、学園の理事長さんとお友だちになっちゃっていいのかしら。私、普通の生徒ですけど……?」
「いいのですよ。私があなたのことを気に入ったのですから」
そう言って、シャルロットが淋しげな微笑みを浮かべた。
「私は、つい最近外国から来たばかりで、日本のお友だちがいないのです。あなたとおしゃべりをしたり、お茶を飲んだりしたいのですけど、ご迷惑かしら?」
「い、いえ、そんな、迷惑なんて」薫が慌てて言った。
「私で良ければ、またお屋敷に伺わせていただきます」
決して強引さを感じさせない、シャルロットの柔らかい口調。しかし、その言葉には、相手にノーと言わせない不思議な威厳が込められていた。
薫も、そんなシャルロットに興味を感じ始めていた。それに、自分の通う学園の理事長じきじきの頼みとなれば、そう簡単に断るわけにもいかない。
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