第三章 スカボロー・フェア 《Scaborough Fair》

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 パニックを起こした父兄から電話が殺到し、それを鎮静させるため聖陵学園は緊急全校集会を開くことを決定しました。時間は明日の朝十時、理事長のシャルロット・ワイズマンも出席予定です」 「間違いないな?」 「工作員が父兄を装って学園から引き出した情報です。間違いありません」 「よし、でかした」  ぱたんと本を閉じると、グレゴリーが満足そうな表情で立ち上がった。 「いよいよ、第二段階だ。君の腕の見せどころだぞ。何人巻き添えにしてもかまわんから、確実にあの娘を仕留めるのだ。いいな?」 「ご安心ください」フィリップスが、口もとに冷たい笑いを浮かべた。 「明日の集会で、私の作った花火を閣下にお見せします。一生の思い出になるような、素晴らしい花火になることをお約束しますよ。  ――それでは、準備に入りますので、これで失礼します……」  フィリップスの顔がモニターから消え、グレゴリーが大きな体をゆったりとソファに横たえる。夕闇が迫るリビングルームには、哀調に満ちた歌声がいつまでも流れていた。                                                          
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