第四章 聖母哀傷 《Stabat Mater》

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第四章 聖母哀傷 《Stabat Mater》

翌二十八日、聖陵学園は朝から緊急全校集会のための準備で、時ならぬざわめきに満ちていた。  学園の生徒を無差別に殺すという犯行予告が、父兄や学園関係者をはじめ、この町に暮らす人びとを不安のどん底に陥れていたのである。  午前九時四十分。全校放送が流れ、生徒たちが講堂へと集まり始めた。  三年A組に続いて薫たちのB組が入場しようとした時、薫は妙なことに気がついた。講堂の横に、清涼飲料水の会社名の入った大きなトラックが止まっていたのである。 「?」薫が、思わず足を止めた。  聖陵学園は規則にうるさく、指定の場所以外は車両の駐車が一切禁止されている。勝手に自転車を止めただけでも、あとで生活指導の教師から厳しく注意される。もちろん部外者の車も、すべて決まった場所にしか止められない決まりになっていた。 「どうしたの、薫?」薫の様子に気づいて、のえるも足を止めた。 「のえる、あれを見て。変じゃないかしら?」 「変って、何が?」 「だって、講堂の横にあんな大きな車が止まっているのよ?この辺は駐車禁止場所だったわよね。自転車だって止めたら怒られるのに……」
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