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B(ここは、どこだ?)
A「どうも、君も観測者ですか」
カメラを構えたラノベキャラに出てきそうな少女は、自分へそう投げかけた。
しらねーよ。誰だよという言葉は飲み込んで状況を確認しようと周りを見回すのだが、女が煩い。見た目は文学系なんだから、黙ってろ。頼む黙ってくれ。
A「あなたも観測者なら観測用の”もの”がありますよね?私の場合はカメラなんですが、あなたはどんな形ですか?良ければお会いした記念に見せて頂ければ嬉しいのですが、どれほどの世界を観測してきたのか、私にも……」
B「ま、待て、待て!」
A「減るものではないでしょう?」
B「減る気がするんだよ!!!」
羽織っていたコートの胸ポケットに隠すと、彼女はむすっとした顔で自分へ「つまらない観測者め」と言葉を投げ捨てた。煩い。知られたくない事、知りたくない事が自分にもあるのだ。
はらはらと降り注ぐ雪の中で見つめ合う彼女と自分。
A「観測者には――――”読み”、”書く”、”聞く”ができるはずです。その権利を行使します」
B「断る」
A「私は既に多くの観測を終えて綴り、書庫へしまってきたのですよ」
B「それでも、誰にも見せたくないものは有る。だから見せない」
平行線。
海と空は交わっているようで交わらない。拒絶の意を示すためにも違う場所へ行こうと踵を返せば女が「つまらない観測者め」とまた言った。大事じゃねーから二回も言わなくていいし聞こえてるっつの。しっつれーな女だなぁ。
聞こえないふりで雪が積もった道を歩いていけば、サクサクと音がした。冷たくて、面白くて、こりゃ子供もはしゃぐのも頷ける。
”新雪を汚す様な”そんな表現が似合うかもしれない。でもできたら汚すのではなくて、何か違う表現がいい。
B「…ふわりと積もった雪を踏むたびに……まるで音楽のように……」
A「陳腐な表現体、新雪は貴方の靴についた泥で汚れていくのですよ」
B「黙って。なんだよついてくんなよ」
A「だって今回の観測は二人でしょう?不本意ですがあなたと過ごさなきゃいけないのを許容します」
B「………」
あぁやだやだ。綺麗なものを無粋に残したくない。
こんな面倒くさそうな女と一緒に居たくない。
やだやだやだ。
A「――――あんたでしょう?」
B「あ?」
A「観測者殺しの二次創作者」
カメラを首に下げて笑った女。
B「だったらなんだよ」
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