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外崎の名前は三段リーグに入って初めて聞いた。
それまでの僕は西の方にはまるで興味がなかったから、西に外崎という僕と同い年のすごいヤツがいることなんか、まるで知らなかったんだ。
もっとも三段リーグの開催は東西で別々。
勝敗成績は一つのリーグとして優劣をつけられるが、東西同士の対局はなく、会うことなんて滅多にない。
その時は、そんなに強いなら、昇段は僕とソイツで決まりかな。
ぐらいにしか思ってなかった。
顔合わせはプロになってからと、そう思っていた。
けど、機会は突然訪れる。
リーグ戦の最中のことだった。
連盟の企画で東西から数名の棋士が顔合わせるすというイベントが行われることになった。
直接リーグ成績にはからまないのだが、東西の上位者が対局するというお祭り的な企画だった。
東のトップにいた僕と、西のトップにいた外崎。
そのイベントで、僕は外崎と対局することになる。
外崎はスッとした長身の、メガネをかけた、どこか大人びた印象のヤツだった。
前に写真では見ていたのだけれど、実物はそれより背が高くて、精悍な雰囲気だ。
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