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「はじめまして。逢坂くんだよね。すごく強いんだって、よく聞いてたよ。ぜひ対局してみたいなって思ってた」
ありえないほどの無愛想で無表情で、けれどセリフはにこやかだった。
それから、外崎は、
「あ、ちなみに俺も強いよ」
と、さらりと告げた。
ちょっと苦手なタイプかもな。
それが僕の外崎に対する第一印象だった。
「それでは、はじめてください」
記録役の掛け声で対局が始まる。
とたんに、それまではシュッと構えていた外崎の様子がガラリと変わった。
感情の定まらなかった彼の目が見開き、そこにはギラギラとした闘志がある。その目はただ盤面にだけ向けられて、まるで周囲の一切が見えていない。
僕は思わずゾッとした。
お祭りごとだからという油断があったのかもしれない。リーグ戦とのギャップで緩んでいたのかもしれない。
あわてて僕も身構えて、盤と向き合った。
序盤戦はスルスルと進んだ。
お互いに定石通り、つまり教科書に沿った手で陣形を組み上げていく。
もう少しで20手というところ。
最初に仕掛けたのは外崎だった。
その一手を受けて、僕はすぐに返した。
ハイレベルな将棋はとにかく読み合いになる。
相手の一手から、常に終局までの流れを頭の中に作っておく。
互いにそうして一手、一手を指し合う。
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