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そういう読み合いを制すためには、とにかく相手の読みを超えた一手を狙う。 早指し。 早く読んで、早く指す。 相手の思考を置いてけぼりにする。 そうやって僕は勝ってきた。 序盤の掛け合いで、頭はいい具合に集中してきていた。 外崎は考えている。 じっくり考えるタイプなのだろうか。 そうだとしたら楽勝だろう。 対局には持ち時間が決められている。持ち時間を使い切ってしまえば、強制的に早指しでやるしかなくなるのだ。 そうなると、この手のタイプは崩れ出す。 10分ほど長考して、ようやく外崎は一手を指す。 読み通りだ。 僕はすぐに応戦する。 そんなやりとりが数回続いた。 そして中盤戦もだいぶ進んだ頃。 長考した末の外崎の一手に、僕はすぐに応じてみせる。 また、外崎は長考だろうとばかり思っての一手だ。 けれど僕の予想を裏切って、外崎はすぐに返してきた。 なんだ? 外崎の指し方の変化に少し戸惑いながらも、しかし読み通りであることに変わりはない。 僕が返すと、すると外崎はまた早指しで応じた。 その一手は、まるで僕の読みとはかけ離れた一手だった。 瞬間、頭の中がヒヤリとする。 早指しはできなかった。 急いで局面を読み直す。 変な汗が湧いてきて、どうにも止まらない。 まるで思考の骨組みをボッキリと折られたような感覚だった。     
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