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”トモダチ”だ、と…
そういえば、朝。何か言っていたような…眠くてちゃんと聞いていなかったな。
「もうすぐで帰ってくると思うから、ちょっと待ってなさいって。」
ぬぅ…“オカアサン”にそう言われるとな…
待つ、他ないか。
仕方なく、部屋に戻ろうと階段に足をかけたとき。
玄関のドアが開き、彼女のよく通る声が耳に響いた。
「ただいまー。お、ケンちゃんただいま。待っててくれたの?」
ユキ!
俺はユキに駆け寄った。
ユキの手を引き寄せ、じっと彼女の目を見つめる。
心配したんだぞ!
何もなかったか?
帰って来るのが遅すぎる!…とは、みみっちい男だと思われたくなかったので言わなかったが、良かった。ユキは何ともないようだ。
「もー、ケンちゃんは心配しすぎ!朝、帰りが遅くなるって言ったでしょ。あ、そうだ!」
そう言うとユキは鞄のなかを漁り出した。
引き寄せた手が離れてしまった。
「じゃーん!ケンちゃんにお土産。これかわいいでしょう!ゲーセンでケンちゃんそっくりだと思って取ったんだよ。」
ユキは俺の目の前にぬいぐるみをつき出した。
それは茶色と白の毛玉の塊。
確かに、”かわいい”…が、俺が今、ほしいものは、お前のー
差し出されたぬいぐるみを通り越し、俺はユキの手に触れた。
「ナァーーウゥ」
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