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彼女の帰りが遅い…
時刻は8時、外はもう真っ暗だ。
いつもの“ガッコウ”の帰りなら、明るいうちには家にいるというのに。
俺は二階の窓から外を見ながら、彼女の姿を探していた。
椅子に座っては、立ち上がり、部屋を一周してまた椅子に座る。…落ち着かない。
やっぱり、何かあったんじゃ…
不安が沸き上がり、頭のなかを嫌な考えが埋めていく。
まさか…浮気、とか…
いや!彼女に限ってそんなこと!
俺は不安を払うように、強く頭を降った。
彼女と一緒に暮らし初めて、どれくらいたっただろう。
もう、随分長いこと一緒にいるような気がするが、あの時のことは忘れもしない。
雪が降りそうな冷たい夜に、俺は初めて彼女と会った。
彼女は俺に「一緒にいたい。」と言ってくれた。
俺は…自分なんかで良いのかと思い悩んだが、彼女はいつも優しく、俺に笑いかけてくれた。
彼女のキラキラと輝くような笑顔が頭に浮かび、思わず机に爪を立てた。
もう、我慢の限界だ!探しに行こう。
部屋を飛び出し、廊下に出る。
玄関に着いたところで、彼女の“オカアサン”に呼び止められた。
「あら、あんたどこ行くの?」
彼女を探しに行ってくる。いつもより随分帰りが遅いじゃないか。
「ユキちゃんを探しに行くつもりかしら?あの子なら今日、友達と晩ごはん食べてくるって言ってたじゃない。」
なに…
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