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「……マジで」
「マジで」
信じたくないと震える史の言葉を、田波がそっくりそのまま繰り返す。無意識に、深いため息が零れた。
保健室はどこよりも良いサボり場所だ。春休み前までは気の弱そうな女性の保健医だったから、肩書きを利用してサボり続けられたというのに。
新しい管理者が田波だなんて。保健室常連の史にとっては、何よりの悲報だ。
「……俺を連れて来たのは、それ?」
「うん? あぁ、うん、まぁそうなんだけど。もう1つ、メインがあってね」
どこか浮かれた声で机周りの紙袋を漁る田波に、保健室に入ってから何度目かのため息が落ちる。
夏までの少し肌寒い今の時期も、容赦ない陽光が刺さる真夏も屋上かと落ち込む気持ちのまま田波を睨めば、痛くも痒くもないと笑顔を返された。
どうにも、勝てる気がしない。
「で? そのメインってなに」
「んー? あ、これこれ」
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