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学校の備品である白いシーツに、田波の、短いけれど艶やかな黒髪が散らばる。
職場の、それも自分の領域で行われる蜜事を厭うように、田波は決して、史を見ようとしなかった。
「……クソ、最悪だ」
「それさっきからずっと言ってんよ」
「何回言っても足りねえんだよ、誰かのせいで!」
「大変だな」
明らかに喧嘩を吹っかけている田波の言葉をさらりと流せば、ようやくその目が、怒りを孕んで史を見る。
どんな顔をされようとやめるつもりのない史は、ギシリとベッドを軋ませながら身を屈めた。ハッと目を丸くした田波が、弾かれたように腕を上げる。
叩くような勢いで、唇が止められた。
「っ、にすんだよ」
「なにって……キス? 一応礼儀かなって」
「いらねえよ、そんなの。することやって、さっさと終わらせろ」
キスは嫌、とか言うタイプだと思わなかった。
意外だと目を瞬かせる史をじとりと睨むくせに、おずおず腕を下げた田波が再び顔を背ける。
筋の浮いた白く長い首筋が、惜しげなく晒された。
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