253人が本棚に入れています
本棚に追加
無理だなんだと言いながら喉の奥に声を隠す田波に息を吐き、史がベッドを揺らす。
部活に励む音に紛れて掠れた嬌声と熱を吐いていた2人は、ふと耳に届いた話し声に息を詰めた。
誰かが、保健室に来る。
「不在になってるじゃん」
「えー? でも保健室にいるって言ってなかった?」
「どこ言ったの、周ちゃん」
「……呼ばれてるけど、周ちゃん」
思わぬ呼ばれ方にくつくつ笑う史を、音や声を立てることを躊躇って唇を抑える田波がじろりと睨む。
随分と女生徒に懐かれているらしい。
「案外中で寝てたりして」
「えー? おーい、周ちゃーん?」
楽しそうな高い声が冗談のように扉をノックする。恐怖心にだろう、きゅうっと痛いほど甘えられた史は、扉を凝視する田波の体を浅く揺らした。
最初のコメントを投稿しよう!