253人が本棚に入れています
本棚に追加
話し声が遠くなり、足音が保健室を離れていく。
ばふっと落ちるようにベッドに背を沈めた田波の、真っ赤になった肌を見下ろした史は、詰めていた息を深く吐き出した。
「……あんたにも、付けときゃ良かったね」
汗に張り付く髪をかきあげた史の、未だひくつく腹に散った白を眺める言葉に、虚ろな瞳が動く。緩慢に自身の腹を見やった田波は、うんざりした顔で息をついた。
「……帰りどうすんだよ、これ」
「体操着、貸してやろっか」
「冗談。……っ、ん」
声をかけて腰を引く史に、ぴくりと田波の足が震える。史は先の膨らんだスキンの口を結び、気怠げにする田波の、ふと上がった指に目を向けた。
「机の横の鞄から、携帯、とって」
「は? 携帯?」
「そう。はやく」
最初のコメントを投稿しよう!