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いつさっきの女生徒が戻ってくるとも知れない状況にあることを分かっていないのか、田波はのんびりした様子で史を急かす。
確かに無茶はしたけど、と不服げにしながらも大人しく従った史は、黒いスマホを田波に手渡した。
「ん。で、お前のも」
「は? 俺の? なんで」
「いいから」
手のひらを上向けた手をひらひら揺らす田波に、いよいよ不信感が募る。きっと無茶苦茶にした後ろめたさがなければ、従いはしなかっただろう。
「げ。パスワードかかってんのかよ。何?」
「……誕生日。0918」
「誕生日って、かわいいな」
くつくつと呑気に笑って携帯を弄る田波の真意は、史には当然伝わらない。
ぼんやり見ていても仕方がないと、あからさま過ぎる、田波の腹に散った白を拭っていた史は。
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