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史は田波の名が並ぶ履歴を見つめ、柔らかいベッドの上でごろりと寝返りを打った。
脅されているにも関わらず、わざわざ時間を作って、他愛ない話や下らない冗談を交わす、その理由は──。
「……まさか」
ふっと、史が自嘲するように浅く息を吐く。
いくら田波が変わり者で、やたらと構ってきたからといって、その答えに辿り着くのは安直すぎる。
自分で思い浮かべた答えに苦笑いで首を振った史は、だけど、と唇を閉ざした。
誰もが敬遠する史に構い、世話を焼き、秘密を握られたからと親しく接する理由なんて、史には1つしか考えられない。
「……、……夏休みっていつまでだっけ」
がばっと落ち着きなくベッドから身を起こした史が、乱雑に置いたプリントの山から行事予定を引き出す。皺だらけのそれから“始業式”の文字を探した史は、まだあと半月残っていることに酷くがっかりした。
まだもう少し、田波とは会えない。
史はそんな風に考えた自分に疑問を感じることもなく、再びベッドにばふっと体を預けた。
「……夏休みって、こんなに長かったんだ……」
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