距離感を【*】

5/23
前へ
/152ページ
次へ
「よく気がついたね」 「えー、だってなんか雰囲気違うもん」 「分かる。なんかちょっと、チャラいよね」  校則よりも数センチ短いスカートを揺らす女生徒が2人、始業式ゆえにスーツを着た田波に絡んでいるのが見えた。 ──顔緩んでんぞ、クソ教師。  夏用の薄いブラウスは女生徒の体型をやんわりと包み隠すけれど、短いスカートから伸びる足の細さが、無意識にウエストのくびれや腰の細さを連想させる。  史はにこにこと愛想を振りまく田波の様子に舌を打ち、カッターシャツのボタンを上から数個開けた。  この1ヶ月半。なんの連絡も寄こさず、お預けを食らわした張本人である自覚を、少しは持って貰いたい。 「チャラいかぁ。切りに行くの面倒で放ってたんだけど、そっか。じゃあ切りに行こうかな」 「その方がいいって。絶対かっこよくなるよ」 「なんならあたしが──」 「センセ」
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

253人が本棚に入れています
本棚に追加