253人が本棚に入れています
本棚に追加
突然割って入った声に、女生徒の非難じみた視線が振り向く。
中に着ているTシャツが見えるほど着崩した史の姿に、女生徒は口を閉ざし、田波は面白がるように目を細めた。
「おはよう、八塚くん。カラーTシャツの着用って、禁止じゃなかった?」
「知らねえ」
「……神崎先生が職員室にいたと思うから、聞いてきなさい。僕も用事があるから、一緒に行くよ」
ちらちらと交互に視線を投げていた女生徒が、田波が立ち去る気配に眉を下げ、恨みがましい目を史に向ける。
田波の裏の顔を詳しく教えてあげられないのが残念でならないと、史は胸の中でベッと舌を出した。
「八塚くん」
「ん」
惜しむ女生徒に笑顔を向ける田波に手招かれ、史がその隣に並ぶ。
昇降口を通り過ぎ、人の気配が少し薄れた頃になってようやく、田波がふっと肩の力を抜いた。
最初のコメントを投稿しよう!