ペシミストの嘆き

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十人十色だとか皆違って皆良い、だとか。 そんな聞こえのいい言葉で纏めようとするくせに、この世界は至る場所で順位というものを付けたがる。 例えば僕みたいな学生の場合、テストは勿論の事、そういえばつい先日に実施された基礎体力テストというものでも、クラス内での順位が付けられた。 順位を付けなければいけない理由があるのならそれは致し方ない事だと思う。けど、何もそれをでかでかと黒板に貼り出さなくていいのに。 ご丁寧に全種目の全順位が記されているそれは、上位の人間からすれば称賛される材料になるのだろうけど、下位の人間からすれば公開処刑も同然だ。 「うわ、見ろよ。三枝(さえぐさ)の奴、全種目ビリじゃん」 「シャトルラン35回ってやばくね?女子かよ」 「さっすがガリ勉~」 ケラケラ、複数の笑い声はこの窮屈な箱の中で耳障りなほどに響き渡る。 急にぐわんっと肩に回された腕。 驚きのあまり、情けない声が出そうになるのを寸でのところで飲み込んだ。 項垂れるように俯かせていた顔を恐る恐る顔を上げれば、僕の肩に腕を回した男子生徒が「さーえーぐーさっ」と僕の名前を呼ぶ。 至近距離で揺れる金色の髪。その髪の間から覗く無数のピアス。その両方が僕の網膜をチカチカと刺激する。 たった今、公開処刑された僕をこの男子生徒が易々と見逃す訳がない。 その証拠に、目の前の男子生徒の顔は心の底から愉しいと言わんばかりに、歪む様に嗤っている。 「お前さぁ、仮にも男なのにあの結果はどうなの?」 どう生きればそんな風に声を高らかと上げて笑えるんだろう。 「あっ、もしかして実は女だったり?」 どう生きればそんな風に誰かを思い切り見下せるんだろう。
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