第1章

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 ペットの犬が生まれ変わって猫になり、かつて暮らした家に戻って来る。  そんな話は荒唐無稽で間が抜けていて、小説や漫画の題材にもなりません。  それでも不思議な事は起きてしまったのです。  我が家の一員となった子猫は、よしおが使っていた食器で餌を食べたがりました。そして一度口に入れたフードを、わざと数粒食器の外に落として、後で食べるために隠そうとしました。それは犬の習性からくるもので、よしおが食事の際によくやっていた仕草でした。 「この猫って、何だか犬っぽい」 「まるで、よしおみたいだねぇ……」  家にやって来た仔猫の様子を見守りながら、家族全員が同じ気持ちを抱きました。  やがて夜になると、子猫は僕の布団で眠りたがりました。よしおは子犬の頃から死ぬ前日まで、毎晩僕の布団で一緒に眠っていたのです。そしてさらに、驚くべき事が起こりました。  よしおは布団に入る時、必ず布団を前足で掘って、寝穴を作るような仕草をしてから眠るのが常でした。そして家にやって来た子猫も全く同じ仕草をして、小さな寝穴(布団のくぼみ)を作ってから、スヤスヤと眠りについたのです。
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