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何もない人生だった。
彼女がいた事もあったが、仕事が忙しくて長くは続かなかった。
稼ぎはそこそこあったけれど、趣味はMMORPGぐらい。
友達と呼べる者はMMORPGの中だけだった。
でも、人生の最後に人の命を奪わないですんで良かった。
オレはそう思いながら、ひっそりと最期の時を迎えたのだった。
~
『……きなさい……』
眩い光の中で意識を覚醒したオレは、何か遠くで透き通るような綺麗な声が聞こえた気がした。
『起きなさい。紅雅 穿輝よ』
あれ? 気のせいじゃない?
しかし、オレの意識は覚醒したのだが、どうにも体が思うように動かせない。
え!? 体が存在しない!?
オレは軽いパニックに陥るが……、
『起きろって言ってるでしょ!? な~に一人でパニックおこしてるのよ!』
パシンッ!!
……痛い……体は存在しないようなのに、思いっきり頭を叩かれたような強烈な痛みが走る。
『意識の中で言葉を発してみなさい。そうすればこの世界で言葉になるわ。わかる?』
まだ混乱していて何かよくわからないが……やってみるか?
『わかったのなら返事!!』
『は、はい!!??』
あ。出来た……。
でも、この人すごい怖いんだけど……。
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