第三章 緑の大地

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 ドラゴンは顔を上げ、兄弟と姉妹と、“動物”たちを励ました。ここにあって“人”と“動物”は、いと低き枝から広大な緑色の大地に降りることにした。  幹を降ること永劫に近かった。  しかしやがて“人”と“動物”はまだ見も知らぬところ、世界樹の根の上に降り立った。  初めて見る世界樹の根の上は無限に広く、初めて見る草と木に覆われていた。空気は心地よく、暖かであった。そして何よりも咲き乱れる花々は美しく、木々の実はまことに馨しかった。  “人”と“動物”は、初めて見る木々の実に初めての空腹を覚え、木々の実に手を延ばした。  ドラゴンも鳥も秩序と均衡の神の忠告を忘れ、空腹のままに木々の実に手を延ばした。そして木々の実を口に含み、甘美な蜜を味わい、腹の底に飲み下し、満腹感を覚えた刹那、“人”と“動物”の前から世界樹の幹が消えた。  かくして“人”も“動物”も、“体”というものを持った地上の存在となり、世界樹の根の上の世界で暮らすものとなった。
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