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ぶつかってから2日が経過し、再び夜に彼の店に出向いた。表の灯りは消えているため、裏から周りベルを鳴らす。
「はい…
ノアさん?どうしましたか?」
経過を見に来た、と告げると、案内されるままに中に入る。彼は怪我した方の足をかばいながら歩いており、おそらく一度とったであろう布は丁寧に巻き直されていた。
手土産にアメリアさんが作った焼き菓子を買ってきたので渡す。日持ちするし、苦手でも客に出せばいい。
「足、どう?腫れたりしなかった? 」
「そんなに気を遣わなくていいのに。まるでお医者さんみたいですね。」
「いや、みたいじゃなくてそうだけど…それで、大丈夫?」
ああ、言わなくていいこと言ったやつだ、これ。隠そうと努めてるみたいだけどなんか動揺してるし。
「えっ…と、
少し腫れましたが、今は落ち着いています。大丈夫です。」
嘘じゃなさそうだし、あんまり長居しても良くないよな。
「そうか、よかった。じゃあ俺はこれで。」
「えっ…それだけ…?」
帰ろうとすると、彼がまたあたふたしだす。
「ああ。とりあえず大丈夫そうでよかった。」
「せめて何か…あ、いただいたクッキー、一緒に食べませんか?」
「いやそれ差し入れだし。」
「そんなこと言わずに…
あの、もしかして予定があったりしますか?」
…そんな捨て猫のような目で見ないでほしい。予定もないから断れなくなる。天然はこれだからタチが悪い。
「いや、ない。」
「じゃあ、二階でお茶しましょう。」
口角をゆっくりと上げ微笑む姿には、やはり美しいという形容詞があっている。
まあいいか。どうせ家に帰っても医学書読んだり1日の反省したりして寝るだけだ。最近遊んでないから1人の時間が増えたし、人と喋る時間が増えるのは喜ばしい。
手すり付きの階段を上りながら、そういえば彼の名前さえ聞いていないことに気づく。
「名前、聞いてなかったな。」
「あれ、ほんとだ。
カルロ・シェイクスピアです。年齢はっ…」
手すりを掴みながら後ろを向こうとしてつまずいた彼を支える。危なっかしくて目が離せない…。
「前見てのぼれ。それともまた担いでやろうか?」
「…いえ、大丈夫です、、。」
なんだか少し赤くなっている気がする。あからさまに嫌だ、というよりは、そんなの恥ずかしい、という感じ。まあ俺から見てそう見えるだけか。
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