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自分でお茶をいれようとするカルロを俺が淹れるからと座らせ、許可をもらったので適当な皿に焼き菓子を並べる。
「すごい、美味しそう。」
はしゃぐような声はまるで子供みたいだ。発言や表情は子供みたい、なのに、その立ち振る舞いはしとやかで美しく儚げで、目がそこに惹きつけられる。
「伯母が作ったものなんだ。贔屓目抜きに美味い。」
「いただきます。」
クッキーを咀嚼し、何も言わずにゆっくりと一枚食べてから彼は顔を上げた。その目はキラキラと輝いている。何も言わずに食べるから美味しくなかったのではと思ったが、そういうわけではなさそうだ。
「すごく美味しいです。本当にありがとうございます。」
なるほど、ひとつ食べ終わるまでは喋らないようにしてるのか。そしてそういう細々としたところの積み重ねが無性に美しく見えるのだろう。
「昨日も言おうと思ってたんだけど、見ず知らずの俺を家にあげるとか、警戒心なさすぎ。誰にでもそうなら警戒したほうがいい。」
そう、初めて会った人を一人で家にあげるとか、今日だって呑気にお茶を一緒に飲むとか。
「いえ、ノアさんだけですよ。ノアさんは危なくないでしょう?」
いやいや、たしかに犯罪とかする気は無いけど。
「知り合いでもないのに俺だけって、それもそれで怖いっ!なんの根拠が?」
「んー…気分?」
「答えになってないだろ… 」
でも、その答えが少し引っかかる。なにか、何かあったようななかったような…
いや、多分無いか。
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