プロローグ 今日の気分と空の色

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「今日の星は、綺麗ですね。」 「ええ。やはり冬は星が綺麗だ。」 「そうですね。 その理由を聞かれたら、あなたはなんと答えますか?」 優しく天女のように微笑みながら、なんて答えにくい質問を。そんなことを考えたこともなかったが、科学的な根拠はいくつか思い浮かぶ。 「え…っと、 空気が乾燥しているから夏のように空気中の水蒸気による光の乱反射が起こりにくい。 日照時間が少ないから残照の影響が少ない。 とかですか?」 少し考えてからそう答えると、彼女はふふっと笑った。 「難しいことを考えるのね。」 いきなり敬語がなくなり少し驚いた。しかしそれよりも、彼女の答えが気になる。 難しい質問をするから、その程度の答えしか思い浮かばなかった。それを難しいと言ってのけた彼女は、自分ならどう答えるのだろう? 「ではあなたの考えは?」 たずねると、彼女は少し気恥ずかしそうに俺から目を逸らした。そして空を仰ぎ、口を開く。 「気分。」 気分?確かに簡単な答えだけれど、それが答えなら俺は納得できない。 「随分と簡単な答えだな。」     
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