プロローグ 今日の気分と空の色

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皮肉を込めていってみる。あまりに暇すぎて、自分でも驚くほど初対面の相手に対して砕けた対応をしてしまった。まあいいか。どうせ今日しか会わないし。 「いいえ、難しいわ。人の気持ちって何よりも難しい。 冬は寒いから、温かな光を放つ星が余計に輝いて見えるんだと思ったの。」 理由を聞いたら少しわかった気がした。それでもやはり俺の答えの方が世間一般に受け入れられる。 「科学的な要因の方が、強いと思いませんか?だいたい、冬の星が明るいのは、誰もが感じていることでしょう。」 何をむきになっているんだ、と思いながらも喧嘩腰になってしまった。全部暇すぎるせいだ。そうに違いない。 すると、彼女は怒るそぶりもなく、柔らかに笑う。そしてさらに質問を投げかけた。 「じゃああなたは、なぜ私たちが赤を温かいと思うかという問いに、どう答える?」 唖然、としてしまった。何も答えられない。エネルギーが高いのは青や紫外光なのに、考えてみればなぜ、俺たちは赤を温かいと、そして青を冷たいと感じるのだろう。 「…たしかにな。」 彼女と同じ方向を向いてみる。この星空は、彼女の目にどう映っているのだろう。 「あなたは、寂しそうね。」 どれくらいそうしていただろう、彼女が口を開いた。その言葉を聞いた俺は、きっと驚いた顔をしているのだろう。 「俺にそう言ったのは、あなたで2人目です。」     
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