ep15 過去の告白と愛の告白

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「…というわけで、僕はノアさんにこんなによくしていただけるほど、綺麗な人間じゃないんです。 ノアさんにこんなに優しくしてもらう資格なんてない。」 そう締めくくると、彼は空を仰いでまた大きく深呼吸をした。目尻に浮かぶ水滴が雨上がりの晴れた空からの月の光を反射して、きらきらとひかる。 ああ、そんな過去があって、だからあの時男に連れていかれかけていたのか。彼はそれでこんなにも臆病になり、自分を汚いとさえ思い始めた… 周りに人はいない。あるのはただ空に浮かぶ星々だけ。寒さのせいか、何かに怯えているのか、震える彼の肩を抱きしめる。 「カルロは汚くなんかない。 もしそれで汚いなら、自分でも忘れるくらいの女の人を愛もなく抱いてきた俺の方が汚い。」 耳元で囁いてやる。腕の中で、嗚咽が漏れるのが聞こえてきた。 「ノアさんは汚くない。だって、僕はっ… 」 「寒いからそろそろ家に帰るぞ。」 「…今日からはもうお店の方に帰ります。」 「だめ。」 強引に彼の手を引き自宅の方へと向かう。だめだ。だって、言葉の節々から、帰りたくないって聞こえてくる気がする。そしてカルロに対する勘は大抵当たる。
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