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部屋に帰るとホットチョコレートを2人分作り、一緒にリビングのソファに座る。
無理やり連れてきたことを怒っているのか、カルロはマグを手で包み込みながら無言でいる。しかしその口は何か言いたげで、唇をつまんで言いたいことがあるなら言えと促すと、ゆっくりと口を開く。
「…ちゃんと、さよならをするつもりだったのに…
これ以上ノアさんといたら離れられなくなるっ… 」
離れられなくなることなんて、むしろ都合がいい。その美しい仕草も、短いのにサラサラと音がしそうなほど綺麗な髪も、さっきの話で自分のありたい姿でいたいと努力した結果だと聞いて余計に好きになった。
自分がどうありたいのかわからないなら、それを一緒に探していけばいい。どんな姿だって彼が彼であればそれが愛おしいと思う。
「離れられなくなればいい。」
マグから離れたばかりの少し温かい手を、包み込むように握る。 その手は驚いて一瞬ぴくっと動いたが、すぐに落ち着いて俺の手に身をまかせる。
「ノアさんがどうしてそんなに優しいのか、僕にはわからないです。」
そう言えば、言っていなかった。
「カルロが好きだから。」
目を見て真剣に言う。そんなご冗談を、なんて笑ってかわさせたりしない。ちゃんと恋愛的に好き、の色を込めて言う。
カルロはちゃんとそれを理解したようで、次の言葉を考えるように俺から目をそらした。
「…えっ…っと、その、僕も好きです…。」
その好きが、たとえ俺と同じ好きじゃなかったとしても、嬉しかった。
「じゃあ、家に帰るなんて言わないでまだここに住んでいてくれるか?」
「迷惑じゃなければ。」
「一緒に居たくないって言われたらすごく凹む 」
本音を告げると、彼の瞳がぐらっと揺れた気がした。
「それなら僕も一緒に居たいから、お店の方へは戻りません。」
そう微笑まれて、ホッとした。まだ一緒にいてくれる。側で守っていられる。
なんども俺の心を満たしてくれた、彼を。
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