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「アシュリーって、僕のこと好きだと思いますか?」
質問形式で答えが返ってきたことにびっくりしたが、その答えは自明だ。あのテオを見る大切で愛おしそうな目。あれはもう、好きという概念を通り越している気がする。
「好きを通り越してそこはかとない愛を感じたよ。なんだ、そんなこと? 」
「ですよね…」
テオはそう言うと少し俯き加減になった。
そんなこと、と言ったのは良くなかった。他人から見ればそんなことでも、彼自身にとっては大きな問題かもしれない。
それに、自分の言葉には明らかにわかるでしょ、と思った故の嫉妬も含まれていた。
「ねえ、質問していい? 」
彼に次の指示を出しながら聞いてみる。テオに聞いたところでどうにかなるわけではないが、彼の意見が聞いてみたかった。
「なんですか?」
ノアさんが2人に対し色々とからかっていたから、2人が付き合っていると僕が知っていることは、テオも知っている。
「テオは男の人が好きなの?」
一般に人は異性を好み愛する。だけどテオは違う。それは男の人が本来好きだと言うことか、それとも違うのか。
「正直女の人は苦手で好きにはなれませんが、、、。
多分、男性が好きというよりは、アシュリーが好きなんだと思います。
彼以外を恋愛対象に見たことはないです。」
考えながらゆっくり言われたその言葉に、羨ましいな、と思う。性別は関係なくお前が好きだ、と言われたら、どんなに嬉しいことだろう。
「僕も言われてみたいな、そんなこと。」
思わず声が漏れてしまった。
「でも、そう言われたい相手は僕じゃないでしょう?」
鋭い指摘だ。多分テオも僕達の関係に勘付いてきているのだろう。
「よくわかってるね。」
「わかりますよ。」
そのあとは、作業を続けた。話した後の静寂は、先ほどの気怠い空気とは違って仕事を捗らせてくれるものだった。その辺は、やっぱりちゃんとはっきりさせておくべきだな、と思う。
別に、キスやその先のことがなく、一緒に居てくれるのでも嬉しい。それでも、もし叶うのなら、この汚れた身体を、彼に愛されてみたい、と貪欲にも思ってしまう自分がいた。
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