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星でも見よう。確か晴れていたはずだ。
外に出ると、もうすぐ秋だと告げる少し冷たい風が身体を吹き抜けた。秋の空は暗い。
寂しいから、もっと賑やかであればいいのに。それでも、そのぼんやりとした輝きも、儚く美しいと思う。
上を見ながら歩いていると、突如重たい衝撃が体全体に走った。
と、同時に自分の足が何かグニャリとしたものを踏んづけ、さらにその足の上にガシャリと何か瓶のようなものが割れ、液体がぶちまけられる。
…一瞬で大惨事だ。前を見て歩かなかった俺が悪い。慌てて謝ろうと前を見る。
「申し訳ありませんっ!」
前を見ると、こちらを見上げる明るいブラウンの髪と紫色の瞳が飛び込んできた。明らかに動揺していて、揺らいだ瞳は今にも涙をこぼしそうに見える。
「いや、俺が上を向いていたのが悪いから。足、大丈夫か?」
思いっきり体重をかけて踏んづけていたから心配だ。あとは、おそらくワインである俺の足元に溢れてる赤い液体。
「大丈夫です。
いいえ、僕も下ばかり見て歩いていたのでっ!こちらこそ…」
お互いに落ち度があり、こっちはスーツのパンツが汚れ、向こうは足を踏んづけられた挙句ワインをこぼした。
ダメージ的にも状況的にもトントンだ。気を遣わせても困るし、もう行くか。スーツ1着くらいで済んで、いい教訓だ。
「よかった。じゃあ、俺はこれで。」
ワインの瓶は使い物にならないだろうから、一応大きい破片だけ拾って近くのくず入れに捨てる。小さいのは、まあいいだろう。そしてそのまま帰ろうとしたら、ジャケットの裾が引っ張られた。
「待ってください!」
振り返るとそこにはさっきぶつかった青年がいた。何かまずかっただろうか。やっぱり足が痛むとか。
「あの、スーツ、汚してしまったので、弁償させてください。」
思っていたのと違う発言に戸惑う。真剣な表情でこっちを見てくるが、流石に悪い。
「え、いいって。俺も悪かったし。」
「では、悪いと思うなら弁償させてください。」
「へ?」
悪いと思うならワインを弁償しろ、じゃなくて?と突っ込みたいのだが、あまりに相手の目が真剣なのでやめておく。
…いや、これはおかしいのは俺の頭じゃなくて、こいつの言ってることだよな?そう思いながらふと彼の足元を見ると、踏まれた方の足を引きずっている気がした。
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