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「…あ、いえ、なんでもないです。
忘れてください… 」
カルロは今度は恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうに顔を赤くして俯いてしまった。
いや、違う。多分彼は何か勘違いをしていて、それが何なのかはわからないけどとりあえず何かを話さなくては。
「俺はたしかにカルロのことを恋愛的な意味で好きって言ったけど、なんで付き合っていることになってるんだ?
…ああっ、違う!違うから。そうじゃなくて、カルロの好きは違うだろ?」
途中まで聞いてすみませんと顔を真っ赤にしながら席を立とうとした彼は、今度は驚いたように目を丸くしてこちらを見ている。
あれ、何かおかしなこと言ったか?
「僕はノアさんに好きだと言われた時に僕も好きだと答えました。」
「いや、だからそれは人としてであって恋愛的な意味じゃないだろ?」
「恋愛的な意味です。ノアさんは優しいしかっこいいしいつも僕のことを気にかけてくれて、王子様みたいに助けに来てくれて、そんなの、独り占めしたくなるじゃないですか。」
躊躇なく言われたその意味がすぐには理解できない。今とんでもなく嬉しいことを言われている気がする。恋愛的に好き。独り占めしたい。そんな言葉がとても嬉しい。
「これ夢…?」
「夢じゃないです。」
「本当に?」
「嘘ついてどうするんですか。」
「…だよな。
カルロにそう言ってもらえて嬉しい。本当に嬉しい。
…ありがとう。」
晴れて恋人同士、ということでいいだろうか。そんな風に考えると思わず口角が緩んでいく。でも、よく考えてみると1つおかしいことに気づいた。
僕とノアさんは付き合っているんですよね?という問いかけはそういえば前提条件の確認作業のような口ぶりだった。
「カルロ、話ってそれで終わり?」
「いえ、本題はここからです。」
やっぱりな。前提条件にまずびっくりしたが、聞きたいことには他にある、ということか。
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