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「本題は?」
「……ですか?」
カルロがもごもごと何か言ったが、小さな声で聞こえない。
「もう一回聞いていい?」
聞き返すと、恥ずかしそうに顔を真っ赤にされた。…そんなにまずいことを言いたいのか、、、?
「僕とキスするのは嫌ですか!?」
「なっ… 」
キスくらいどうってこと…と続けようと思ったが、彼とのキスは特別で、ずっと昔本当に好きだった人がとしたものよりさらに甘くて熱かった。
でも、嫌なわけがない。したいと思う。むしろその先まで、想像したこともある。彼が俺をそういう意味で好きだということを知らなかったからしなかっただけだ。
「してもいいなら、したい。」
彼のそばに立ち、はっきりと、真っ赤になってうつむく彼の頭を撫でながら囁く。
「…こんな僕でも…? 」
カルロは潤んだ目でこちらを見ながらそう言ってきた。こんな僕ってどういうことだ。むしろ彼より綺麗な人を俺は多分知らない。
「こんなってどんな?」
「前に言った、こんな、自分が何かわからない僕なんかで。」
“昔から女性になりたくて、でも色々な経験を経てその姿が汚くて、でも男性の姿でも汚くて”
彼が言っていた言葉を思い出す。男性か女性か、とか、そういうことか?
「それが何か問題?」
「…だって、僕は、男…で…、ノアさんが抱いてきた女性とは違う… それに、前まで女の子になりたいと思ってて… 」
何が問題なのかわからない。もともと初めて恋をしたのは男性だったうえにテオたちを見てきたから男性との恋愛に抵抗はないし、女装姿のカルロはとても綺麗だ。
その美しい所作も、努力の証だと知ってもっと好きになった。
「それも含めて、全部好きだから。
…怖がらないで。」
彼の肩がびくりと震えた。その肩の後ろから手を回し、じっと目を覗く。彼が驚かないように、ゆっくりとその顎を掴み、唇を近づけて行く。
彼は泣いていた。彼が泣くのをみるのは2回目だ。ただ、今回のそれは前のそれとは違い、優しくて静かな涙。
抵抗が示されることはなく、そのまま唇が重なった。
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