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プロローグ 今日の気分と空の色
…つまらない。
そう、ため息をついた。
「お前が来ないと綺麗どころが集まらないんだよ」と無理やり誘ってきた友人は、全く俺に構わずその辺で好みの子を口説いている。
俺の周りには最初人だかりができていたが、だいぶ前にそれも散ってしまっていた。
なぜならここは婚活パーティー。どうせ身体だけの関係にしかなれない俺がいても、結局アウェイなだけだ。
…まあ、客引きにはなったようだから、結局友人的には思い通り、というわけか。
することもないので、ベランダへ出てライターを取り出す。火をつけると、煙が口の中に充満した。
タバコは特別好きじゃない。周りで友人が吸っていたから吸い始めて、そこからずるずると、特にやめる理由がないからと吸い続けている。
今日は星が綺麗だ。あのどこかに、彼はいるのだろうか。もしいるなら、自分にも見える位置にいてほしい。そんな無駄なことを今でも考えて、結局何年も引きずっている。
「お一人ですか?」
後ろから声がして振り返ると、紫のドレスを見にまとった女性が微笑んでいた。
すらりと背が高い美人で、何より姿勢や仕草が美しい。一言喋るにも、口を開いて言葉を発しまた閉じる動きが全てスローモーションで滑らかにつながっているように見える。
「ええ、まあ。数合わせできたもので。」
まあ、この人も俺には関係ない。今日来た結婚目当ての女性と何かあってもあとで面倒臭くなるだけだ。適当に失礼のない程度の返事をする。
「私もそうです。友人に無理やり誘われて。
…パーティーはお楽しみになりました?」
「ええ、とても。皆さんお美しくて。俺なんかにはもったいない。」
愛想よくして、いい雰囲気になりそうになったら会話を切ってまたどこかに行けばいい。話し相手がいなくて暇だから、数合わせ同士もう少し話していたいとおもった。
彼女は俺の隣まで来て、俺が寄りかかっているてすりに自分も手を添えた。
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