第二話

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第二話

向こうの部屋から、小太郎の朗々とした声が聞こえてくる。 「……()(のたま)はく 『(あやま)ちて改めざる、 ()れを過ちと()ふ』と……」 小夜里は、孔子の言葉を弟子の衛霊公が書き留めた部分「子曰、過而不改、是謂過矣。」の書き下しを聞いて、苦虫を噛み潰したような顔になる。 ……「誤りを犯して改めないことこそ、誤りと云う」とは、まさに、今のそなたのことであるぞっ。 「小太郎は自分の『過ち』がなんであろうか、判っておるのであろうか」 小夜里は思わずごちた。 そもそも、「過ち」が判らなければ、改めようがない。 それでは、小太郎の改められなかった「過ち」が、塔のようにますます積み重なっていくではないか。 小夜里は、盛大なため息をまた吐いた。
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