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「なにするんだ!」
「珍しい顔だったので撮ろうかと」
「失礼すぎる!」
彼女は残念、と呟いて、カメラを下ろしてくれた。ほっと胸をなでおろす。
「勿体ないと思わないんですか?この木」
「え?」
「こんなに綺麗に咲いているのに」
そう言って顔をあげる彼女に合わせて、僕も顔をあげた。広葉樹は冬の寒さの中で、すでに花どころか葉も落ちているのに。
「ほら、雪の花」
「あ」
雪の花。気づくと、枯れ枝と思っていた木々はみな、真っ白でふわりと軽い花を咲かせていた。しんしんと降る花弁が、静かな公園をきらきらと彩っている。
「雪、好きなんです。撮影禁止の看板があるのは知ってましたけど、花壇の中に入らなければ大丈夫かと思って……どうしてだめなんですか?」
「僕がいるからだよ」
びゅう、と強い風が吹き始める。きれいな花びらたちが、空に飛んでいってしまう。
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