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「え?ちょっと意味が」
こんなに心が揺れたのはいつぶりだろう。もう、月日を数えるのもやめてしまっていたから。
「雪の花のこと、教えてくれてありがとう。看板は捨ててもらっていいよ」
「は……?」
ひときわ強い風が吹いて、彼女の視界を遮る。彼女が腕を伸ばすが、その手が僕に触れることは絶対にない。あの日からずっと、知っていたことだ。
「待って、あなたは……」
風がやんだ頃、彼女はひとりで立ち尽くしていた。足元には足跡が一人分しかない。
彼女は最初から、ひとりだったのだ。
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