第四話

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「……鍋二郎さま……」 初音が(かす)かに呟いた。声にはなっていなかった。 「もう一度、訊く」 兵部少輔は左の親指で、本差の(つば)をかちり、と鳴らして浮かせた。 「おまえ……初音になにをしておる」 湧玄は初音の上から、ばっ、と飛ぶように降りた。 初音はすばやく湧玄から離れ、乱れた着物の前をかき合わせ、両腕でおのれ自身を抱きしめた。 髪はぐずくずに乱れて、歯の根も合わぬほど、がたがたと震えていた。
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