ピンクが抜け落ちた世界であの子が私を待っているから

現実

気持ちがグチャグチャに掻き乱されるのに、泣くことも叫ぶことも出来ずに気が狂いそうになった時、聞き覚えのある声が聞こえた。

「よかったー。 意識だけでも戻ってくれて本当に、本当によかった。 ありがとうございます。
よかったなぁー。 本当によかった。　頑張ったなぁー。 本当に頑張ったな。」

その声から彼が泣きながら喜んでいるのが分かる。
私が声だけで、彼がどんな表情をしているのかさえも把握出来るように彼もまた私が何を一番に気にかけているのか分かっていた。

「あの子は大丈夫だよ。
君が出掛けたっきり帰ってこないから、はじめのうち、あの子なりに何か感じるものがあったみたいで、はじめのうちは泣いたりぐずったり大変だったけど、お義母さんが一生懸命してくれて助かったよ。
それに、今朝は寝起きがとてもよかったみたいで、朝ごはんもいっぱい食べたんだって。」

事故に遭った時、娘は車に乗ってはいなかったのだ。

はじめて娘を旦那預けた。
それまで誰にも預けたことがなかったので私は気が気じゃなかったけれど、来年には幼稚園に入園するし、これからそういう機会をつくってあげることは大切だと旦那が言った。

「ママ、急いで帰ってくるから、お利口さんで待っててねー。」
私がそう言うと、娘は頷いて、私に手を振った。
「ママ、バイバーイ。まってるねー。」
後ろ髪を引かれながら玄関を出た。