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現実
夢から覚めたということだけはすぐに分かった。
しかし目を開けても、目を閉じても何の変化もない。
確かに目を開いているのに形や色どころか、光さえも感じることが出来ない。
頭が重く痺れていることに気づくとすぐに感じる痺れや痛みは体全体に広がった。
まるで金縛りにでもあっているように身体が動かない。
声を出そうとしても、声は出ずに、耳には何の音も入らない。
朝方、目覚めているのに身体が動かずに自分が金縛り状態にあることに気づいたことは度々あった。
金縛り状態は、身体が疲れすぎている時によく起きる現象で、実際は浅い眠りにあるのに脳は自分は起きていると錯覚を起こしている。
こういう時にどうすれば目覚めることが出来るのか?
それは冷静にどこか身体の動く場所を見つけて集中する。
少しでも動けば目覚めることができる。
指先が僅かに動いた。
すると、滝の音のような耳鳴りがして、それから少しづつ外の音が耳に流んだ。
心音を拡大したような機械音や人の動く音や話し声が聞こえて、ここが病院であることが分かった。
病院で眠りについた記憶は無い。
私は夢をみる前の記憶を辿った。
取れた銀歯を取り付けた歯科の帰り道、思ったより治療が長引いたので有料道路を使うことにした。
有料道路に入って数分車を走らせると少し先で車が詰まっていることに気づいた。
スピードを減速させて、何気なくバックミラーを見ると、トラックスピードを緩めずに近づいて来ていることに気づいたその瞬間、物凄い音が聞こえて…身体中に衝撃が走った。
うそでしょ…後部座席に娘が…誰か…誰か…お願い…助けて…助けて!!
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