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文学フリマ東京で販売される『うたたね3号』の試し読みです
夏の休日に甘酒を飲みたくなった
ふらりと行きつけの本屋に行って
ふらりといつもの通勤の道を行く
ここの給水塔はふたりだけのもの
そう手をつないでいた近距離の春
毎年ここに報告をしにくる桜並木
冷たい甘酒は飲めなかったけれど
久しぶりの一人だけの休日、少し
私の左手、何かを欲しがっていた
冷たい甘酒? 温かいてのひら?
両方かもしれない、もしかしたら
ここの給水塔はふたりだけのもの
欲張ったせいで一万歩も歩いたら
一人、が切なくなってくる、雨雲
午後は二人で野球観戦をしようと
今机に向かって、私たちは給水塔
のようにことばをくみ上げては、
誰かに届く飲む点滴のようなもの
を二人で作っている、寂しくない
ここの給水塔はふたりだけのもの
毎日ずっと一緒にいるから思う、
いつか一緒に暮らせたら。家って
なんて抜け出しにくいものなんだ
一緒にことばを汲みことばを組む
二つの苗字は体内に吸収されるね。
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