血液依存

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 二〇〇八年、夏。  僕が高校生だったころの話だ。  遠い県で同級生の眼をカッターナイフで刺したらしいマイコは、ここにも噂が伝わっていつの間にか居なくなった。  母子家庭で育ち恐喝の常習犯だったリュウは、少年院を出てきたら入れ違いで母が刑務所に入って結局独りだった。  他県で拾った女達を夜に沈めて稼いでいたカズマは、大きいどこかに目を着けられたと小さく呟いた後どうなったか知らない。  港に隣り合う大きい公園内には舗装されたグラウンドがあり、夜な夜なスケボーやダンスに興じる集団があった。街灯はちらほらあったが僕らみたいな子ども達にとっては総じてショボく、どこからか期限切れの発煙筒を山ほど集めてきて、花火のような閃光を吹き出すそれを照明とした。  たびたび自転車の防犯登録を確認するという名目で白黒の大人が巡回して来た。そいつらの姿が見えるや、僕らは速やかに禁制品を一斉に草むらへ投げ込み、涼しい顔をしているのだった。白黒の車もしまいには顔なじみの世話が面倒になって、僕らに時間の猶予を与えるようにごくゆっくりと入ってくる暗黙の了解ができていた。
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