バーガーショップと遺書とぼく

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 夏休みも今日で終わり。ぼくは遺書を書いている。  バーガーセット。ポテトとオレンジジュースはLサイズ。この店で頼むものは決まってる。ごちゃごちゃしたのは好きじゃないんだ。そんなぼくが、今こんなにお客でごちゃごちゃした場所で、遺書を書いている。  窓の外では陽も落ちかけているみたいで、店内のほうが明るくなってきた。夏休みだから、ぼくくらいの子が多い。今日の話だろうか。夏の思い出を自慢し合っているのかな。それとも二学期の話だろうか。この時間にいるってことは、夏休みの宿題は終わっているのだろう。  僕もお盆の時期までに宿題は終わらせた。だから今、ここで遺書を書いている。けれど遺書を書くんなら、別に夏休みの宿題なんてする必要は無かったんじゃないかとぼくは思った。今更だ。  彼や彼女たちは楽しそうに話してる。けれどぼくには、そのはしゃぎ方が何だか嘘くさく見えてしまう。僕の目は捻れているのだろうか。  学校も、そういう感じで好きじゃない。どこか嘘くさい。きっと捻れているのだろう僕の目はぼくの心ってやつで、それがきっと体から染み出ていて、それが周りに判るほどで。だからぼくは浮いているのだと思う。殴られたり蹴られたり、そんないじめを受けているわけじゃない。ただみんなが遠巻きに僕を見て、ひそひそ話をするだけだ。無視と陰口ってやつだ。それがぼくの世界だ。ぼくに対する世界の認識だ。  ぼくが一人で占領しているボックス席に人が近づく気配がして、ぼくは顔を上げた。家族連れのようで、小さい子どもを抱えた女の人が、ぼくを見てちょっとびっくりして、顔を顰めて離れて行った。ぼくは背が低いほうだから、きっと空席に見えたんだ。家族連れが席を探しているのを目で追いながら、ここにいるのは迷惑かな、とぼくは思った。でも店に入った時はとても空いていたんだ。通り過ぎて行く人がぼくには目もくれないくらい。それにまだ遺書を書き終えてない。勝手に言い訳を並べていて、そういえば、と気が付いた。ぼくはあんなふうに両親とこの店に来たことが無い。
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