文学フリマ東京で販売される『うたたね3号』の試し読みです。

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

文学フリマ東京で販売される『うたたね3号』の試し読みです。

私はもうすぐ名付けられる 人生がいくつもあるとするならば 私は何回の転生を繰り返してきたのだろう 少女、死ぬ 娘、もうすぐ死んで妻となる 愛する人が私のうなじに唇を寄せて あいしてる、あいしてると言ってくれたこと 私は空に幸せという名の花束を放り投げる 私はもうすぐ名付けられる 名前が変わるのは不思議 二つの苗字を体内に吸収するのだろう 家族、遺伝子、らせんの階段を昇る、下る、あなたと一緒に、遺伝子 もう何も怖いことはないんだよ 一緒にいられたらそれでいい 娘だった私に悔いはない(よかったね、死ねて) 君はコピーだ お母様のコピーなんだよ 確かに、そうかもしれないね 君の何十年後かが楽しみだなあ 私の母は自慢ではないけれど 年齢の割に美人なので あんなふうに美しくなりたいと願う 二つの苗字、私の中で一つとなる ばいばい、今までありがとうね ばいばい。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!