0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
文学フリマ東京で販売される『うたたね3号』の試し読みです。
私はもうすぐ名付けられる
人生がいくつもあるとするならば
私は何回の転生を繰り返してきたのだろう
少女、死ぬ
娘、もうすぐ死んで妻となる
愛する人が私のうなじに唇を寄せて
あいしてる、あいしてると言ってくれたこと
私は空に幸せという名の花束を放り投げる
私はもうすぐ名付けられる
名前が変わるのは不思議
二つの苗字を体内に吸収するのだろう
家族、遺伝子、らせんの階段を昇る、下る、あなたと一緒に、遺伝子
もう何も怖いことはないんだよ
一緒にいられたらそれでいい
娘だった私に悔いはない(よかったね、死ねて)
君はコピーだ
お母様のコピーなんだよ
確かに、そうかもしれないね
君の何十年後かが楽しみだなあ
私の母は自慢ではないけれど
年齢の割に美人なので
あんなふうに美しくなりたいと願う
二つの苗字、私の中で一つとなる
ばいばい、今までありがとうね
ばいばい。
最初のコメントを投稿しよう!