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赤ワインが命
悪夢のような、悪夢
深い眠りから目覚めた。まだ頭に霞がかかったようだ。眠る前に赤ワインを一本開けたから、そのせいだろう。目の前には彼がこちらを見下ろすように立っていた。つまり、私は椅子に腰かけている状態だ。黒い上着を着た姿は、焦点が合わずにぼやけて見える。彼はいつも白衣を着ているから、新鮮だった。
彼は片腕を頭の上の高さにまで上げていて、何かをそっと握っていた。ちょうど、自由の女神のポーズだと言えば、わかりやすいだろうか。
彼は焦点が合う距離までゆっくりと私に近づいて、それから私と目線を合わせるようにかがんだ。彼は酩酊した時のようなとろんとした目で私を見つめた。私がまだ酔っているから、そんな風に錯覚しただけかもしれないが。
「俺が持っている物が何なのか、わかるか」
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