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「私、この一瞬のために生きているの。」
と、普段無口な彼女が唐突にカメラを覗き込みながらつぶやいた。
「どんな一瞬なんだい?」
「ん、それは撮りたい絵を待ってカメラのファインダーに収めてでシャッターを押すの。そうするとその瞬間世界が止まってそこには私と被写体しか居ない世界そこで私は被写体と言葉のない会話をするの。その会話がとても楽しくて。」
「その会話ってどんな会話をするんだい?」
僕は急なつぶやきに、反射的に返してしまった。
「それはね、貴方がとても好きだから撮せて下さいって言うの。そうすると被写体が私に私はこんなふんに取ってほしいなぁって私に語り掛けてくれるの。それを理解してシャッターを押すの。
相手のことを理解して会話が成立して、お互いのことを理解すると、とてもいい写真が撮れるの。」
「私は、の瞬間がとても好きなの。」
普段はあまりしゃべらない彼女が珍しく自分のことを口下手に話してくれた
「へーなんか写真を撮るたびに愛の告白をしているみたいだね。」
「うん、そうだね。私は写真を撮るたびに恋をするの。」
と、堂々彼女は恥ずかしげもなくカメラを覗き込みながら言葉を返してきた。
僕は自分首にかかっているカメラをつかんでう彼女にカメラを向けながら言った。
「そっか。じゃぁ僕は今日君の事を撮るこの一瞬のために生きていたのかな?」
「え?」
『パシャ』
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