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生きていた証が
拝啓、貴女へ
これが読まれていると言うことは
きっと、戦友が私の我が儘を聞いてくれたのでしょう。
きっと、私はもうこの世には居ないのでしょう。
きっと、貴女は生きていてくれたのでしょう。
「私の生きた証を、未来を生きる貴女へ」
その願いはどうやら叶ったみたいです。
学校帰りに歩いた道の脇に咲く向日葵のような、暖かい美しい笑顔で、人を元気付けて、
必死に、大切なものを守ってくれたのでしょう。
本当にありがとう。
貴女の繕ってくれたあの外套は、私を何度も助けてくれた。
貴女の愛が、私を生かしてくれた。
本当なら私も、生きてかえって、それで貴女と貴女の子供と、貴女の孫を抱きたい。
ですが、それも叶いません。
何年先でも帰ることができない。
泣いていないか、少し心配です。
貴女の温かな笑顔に見送られて最期を迎えたかったのですが、
そうもいかないようです。
だからせめて。
あの広く青い海のその上で、
銀の矢となり、
立派な最期を迎えましょう。
貴女が誇れるような、
胸を張って生きられるような、
そんな最期を迎えましょう。
貴女を絶対に忘れない。
私は最期まで貴女を愛しています。
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