ファスナー

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夕方。 トモヤ君と別れ、家へと帰る道。普段から人通りの少ない道は、この時、僕一人しかいなかった。自然と歩く足取りも速くなる。夏が終わって、だいぶ日が短くなってきた。うかうかしていると、あっという間に真っ暗だ。 家までは数分足らず。いっそのこと走ろうか。僕は斜めがけしていたバックの紐を持ち直した。その時。 『…………ちゃーん』 声が、聞こえた。 立ち止まって振り返る。誰もいない。見えたのは、ゴミ捨て場に居座る一羽のカラスだけ。 ――なんだ。カラスが鳴いたのか。 原因がわかり、僕はほっと胸を撫で下ろす。 『…………ちゃーん。マキちゃーん』 また、聞こえた。 僕は目を見開いた。見開いた状態で、カラスをよく観察した。 カラスの嘴は堅く閉じられたままだった。
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