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女「ええ、『いた』。幽霊って過去にその人がいたという証拠であり、何らかの理由によって、残ってしまった思念の『忘れ物』。いわば、PCで言えば人と呼ばれるファイルを削除したところ、バグにより壊れたファイルが残ってしまった状態だと思うんです。って、わかりづらいですよね」
女、カメラのファインダーをのぞき込み、周囲を見渡す。
カメラを男に向けた瞬間何かに気づく。
男、道路の方へと歩きだす。その後、女の方へと振り向く。
男「君のこと、好きになっちゃった。ねえ、もっと、君のお話聞きたいな!だから、もっと、僕の方へ、おいで」
女、カメラを男に向けたまま外さない。
女「ええ、ようやく、良い被写体を見つけました」
男「?」
女、男にむけてフラッシュを炊く。
その途端、男の周囲をまばゆい光を包み込んだかと
思いきや、カメラのレンズへと吸い込まれる。
男、消える。
女「だから、言ったじゃないですか。道路に出なければいいって」
女「視える人が目撃者に一人いてよかった。梅の木に取り付く、血を喰らう『忘れ物』。もう、起こらないでしょう」
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