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私の両親は私が小さい頃に離婚し、私は母に引き取られた、ということだけは知っていた。
私には何も言わずに、あなたとは他人となっていた。
「知ってたんだね」
「……言うなって父さんに言われてたから」
「なんで」
あなたは少し迷ってから、決心したように、白い息を深く吐いた。
「── 俺はお前と腹違いの兄弟だから」
「!」
「お前の父さんは、母さんがお前を妊娠した時に不倫してたんだよ。 バレて、離婚した。 父さんは俺を選んだってわけ」
「そっか……」
私達、家族だったんだ……。
写真で分かっていたけど、本人の口から言われたんじゃ、嘘と証明出来ない。
でも ── 嘘であって欲しかった。
「……私ね、あなたに言いたいことがあったの」
立ち上がって、あなたの傘を持つ手に自分の手を添えて、距離を縮めた。
あなたは少し驚いたような顔で私を見てきた。
これが最初で最後だから、どうか許して。
そうしたら、明日からちゃんと、
「私……あなたのことが好き『でした』」
この長い恋にサヨナラして、前を向くから。
傘を持つ手に力がこもる。視界がぼやける。
お願い。私の、妹のお願い聞いて。兄さん。
私をフッて。
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