君と私の秘め事

1/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
シンシンと雪が夜空から降っている。傘はささず、じっと、公園のベンチに座っていた。 夜中の静かな街を、いつもより明るしてくれる雪が私は好きだ。 眠気が徐々にやってきている中、少し顔を上げて、腕時計をちらりと見ると、短針は10時近くを指していた。 「あの場所で……待っているから」 急な話で少し驚いていたあの人。 このまま待っていて、彼が来てくれる可能性はあるだろうか。 場所を覚えていない?それとも、来る気なんて無い?イタズラだと思われたかな。 雪で白くなりつつあるコートのポケットに、赤くなった手を入れる。そして、中に入れていた物を取り出した。 小さい頃の写真。他の人から見れば、ただの一般的な家族写真だ。 この前の大掃除の際、押し入れで見つけたアルバムに入っていた。それを見つけた途端、ページを捲る手が止まった。 そして今日、勇気を振り絞ってあなたに声をかけた。 これが最初で最後だから。どうか……。 ザクザク…… 「!」 俯いていた視線の端に靴の先が見えた。それと共に私に影が差す。驚いて、弾かれたように顔を上げる。 ……来てくれた。 「ごめん、寒かったよな」 傘を持つ手を私の方に伸ばしながら、冷静ながらも少し焦った様子の口調。 「……もう帰ろうと思ってた」 ああ、意気地無し。ちゃんと言えない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!