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シンシンと雪が夜空から降っている。傘はささず、じっと、公園のベンチに座っていた。
夜中の静かな街を、いつもより明るしてくれる雪が私は好きだ。
眠気が徐々にやってきている中、少し顔を上げて、腕時計をちらりと見ると、短針は10時近くを指していた。
「あの場所で……待っているから」
急な話で少し驚いていたあの人。
このまま待っていて、彼が来てくれる可能性はあるだろうか。
場所を覚えていない?それとも、来る気なんて無い?イタズラだと思われたかな。
雪で白くなりつつあるコートのポケットに、赤くなった手を入れる。そして、中に入れていた物を取り出した。
小さい頃の写真。他の人から見れば、ただの一般的な家族写真だ。
この前の大掃除の際、押し入れで見つけたアルバムに入っていた。それを見つけた途端、ページを捲る手が止まった。
そして今日、勇気を振り絞ってあなたに声をかけた。
これが最初で最後だから。どうか……。
ザクザク……
「!」
俯いていた視線の端に靴の先が見えた。それと共に私に影が差す。驚いて、弾かれたように顔を上げる。
……来てくれた。
「ごめん、寒かったよな」
傘を持つ手を私の方に伸ばしながら、冷静ながらも少し焦った様子の口調。
「……もう帰ろうと思ってた」
ああ、意気地無し。ちゃんと言えない。
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